前置詞byを「近く」というワードだけで意味を理解しようとしていませんか?実は根本にあるものは「近い」なのですが、その言葉だけ追いかけても前置詞byを理解することは到底できません。大事なのはイメージを膨らませて、何が行われているのかを紐解くことです。今回は前置詞byとは何なのか、前置詞byを使って何が行われているのか、使い方を例にとって解説します。この記事を読めば、囚われていたモノから解放されて、本当の使用目的が分かるようになります。
前置詞byとは何なのか?
前置詞byは古英語の時代からnear, in, by, during, about(around)など多義に渡り、なかなか1つのイメージを言い当てることが難しいのですが、イメージの膨らみと言うものを6つの視点+αでお伝えできればと思っています。
まずは、ヒント(手がかり)になり得ることなので、
+αからお話ししようと思います。
日本語で「~によって」と聞くと前置詞では何を真っ先に思い浮かべますか。
恐らくbyではないでしょうか。
もちろん日本語の「~によって」の感覚が全てbyとは限らないですが、偶然にも日本語の「~によって」とbyは、リンクすることが多いという事は言えます。
日本語の「~によって」にはいろんな漢字が当てられますが、
寄る・由る・依る・因る・拠るは全てbyを連想させます。
寄るは「近くに行く」という事なので「~に寄って」には「近い」と言うキーワードが織り込み済みです。
由るは「経由する」の中にあるので、「立ち寄る」と似たイメージがありこちらもbyの近いというイメージを想起させます。
また、
依るは「方法や手段に依って」を意味し、by bus、by mailなどが思い浮かびます。
しかも「手紙によって」は「便りで」と言いますが、「便り」と「頼り」は「手(た)+寄る」を語源としています。
すなわち「バスで・手紙で」とは、「バスや手紙に頼って」の他に、「バスを手元に寄せて」、「紙を手に寄せて」、と近い発想でも使われているってことです。
因るは「by poison毒に因って、by fire火災に因って」など原因を表し、
拠るは「by mistake間違いに拠って(に因って/間違いで)、by law 法に拠って(法に従って)」など準拠や根拠について言及します。
そして、因るも拠るも、「それが唯一の寄りどころである」という意味を含んでいます。
ここまでくればなんとなく前置詞byの全体像が見えてきたのではないかと思いますが、まだまだ序章なので、最後まで前置詞byの使い方を見ていただけると幸いです。
前置詞byの使い方①近くの経由地
前置詞byと言えば、「近くに」のイメージですよね。
では「近くに何かがある」と言う場面を考えたことがありますか?
つまり、実際にどんな会話で使うか、を想像して見て下さい。
例えば自分の家を説明するときに「○○の近くにあるよ」みたいな説明しますよね。
My house stands by the sea.
僕の家は海の側にある。
海の側(近く)と言っても範囲が広いので、
ある程度絞ってからの話になりますが、
これって、
海を目指してくれば、
赤い屋根の家がみえるよ、
その赤い屋根の家が僕の家だよ。
みたいなニュアンスじゃないですか。
この時に発話者が何をやっているかわかりますか?
家の話をするために、わざわざ代理を立てているんです。
しかも代理の方が相手にも伝わる
と言う特徴がありますね。
私の家が主体なのではなく、隠れた主体は近くの海だという事です。
また海を経由して家までの道案内をしているとも言えます。
他の前置詞、例えばonやat、inにもそのような側面はありますが、前置詞byはその側面がやや異なり、より濃厚なのです。
前置詞byの使い方②隠れた主体の受け身
それが良く分かるのが受け身の文章です。
能動態と受動態を比較することで主体が誰だか分かります。
①I broke the vase.
私がその花瓶を割った。
②The vase was broken by me.
その花瓶を割ったのは私です
(その花瓶は私に割られた。)
受け身にして、いくら主語を花瓶にしたところで、隠れた主体は私なのです。
それは動作の主体が私だからです。
②のような受け身の文章は主体を隠したい時にby meを言わないで使います。
The vase was broken.
花瓶が割れちゃった。
日本語で言うと、「花瓶が割れた」とあたかも自分が関わったことを隠すための作文です。つまり主体を隠すことが受動態の1つのメリットなんです。
逆に言えば、平時に勝手に花瓶が割れることはないわけなので、
隠れた主体を明らかにするためにbyを使うという事です。
さらに、私を経由して花瓶が割れたという事でもあります。
海を経由して家までの道案内をしている、と同じ含みがあります。
前置詞byの使い方③交通手段に依って
この隠れた主体の含みは交通手段にも表れています。
車で、バスで、飛行機で、
ここには
車を使って、バスを使って、飛行機を使って、
と言う意味がありますが、
車に頼って、バスに頼って、飛行機に頼って、
など身体を預ける隠れた主体としてbyが機能しています。
I drove here.
私はここまで運転してきました。
であれば、主体は私ですが、
I came here by car.
私は車でここに来ました。
なら、主体はむしろ車でしょう。
この主体の違いが分かりますかね?
私が車を運転して、は操作する主体は私です。
車で=車によって(依って)、とは車に依存して、と言う意味です。
これが手段を意味する「依って」です。
だから、車が主体です。
(車に頼って、車に依存して、車を手元に寄せて)
冠詞が付かないのは特定の車、特定のバス、特定の飛行機を言いたいのではなくその概念を伝えるだけだからです。
いつも無冠詞なのではなく特定の車を伝える際は冠詞を伴います。(詳しくはこちら)
交通手段のbyは、乗り物に使う前置詞onとinを併せて解説した記事があるのでこちらをご覧いただけるとより違いが分かると思います。
そして「~に依って」と言う含みは次のような文章にも表れます。
He was protected by his body armor.
彼は防弾チョッキに守られている。
彼は防弾チョッキに依って守られている
という事ですね。
皆さんが日本語で「~によって」を聞いて最初に思いつく英語のbyが機能している代表例ですね。
前置詞byの使い方④~まで
My house stands by the sea.
僕の家は海の側にある。
もう一度登場してもらいました。
と言うのもいろんな含みがあることを知って欲しいからです。
その1つが経由して、と言う含みですが、他にも
海までくれば僕の家が分かるよ
と言う「~まで」と言う含みです。
もう分かりますよね。
期限を表す前置詞byの「~まで」と言う派生です。
Hanako had promised to be back by four o’clock.
花子は4時までに帰ってくると約束していた。
他にも限界値を言う場合の「~まで」がありますね。
This new technology can reduce energy consumption by 99 percent.
この新技術では従来エネルギー消費の99%削減できる。
99%まで削減可能であると言う意味で、さらに計算で使われるbyも「~まで」の含みがベースになっています。
Five multiplied by four is (/equals) twenty.
5かける4は20。
ここにある掛け算のコアの意味は
5と言う数字を4回まで(by four times)折り重ねる
と言うことです。
つまりリンゴ5つ入った箱を4つまで重ねる
そんな意味合いが語源になっているんです。
前置詞byの使い方⑤近くを見る
海までくると僕の家が分かる。
これは、次のように解釈することも出来ます。
海まで来て見渡すと僕の家がある。
僕の家の周りを見渡すと海がある。
海を起点に僕の家を見ても良いし、
僕の家を起点に海を見てもよい
と言う関係性が分かると思います。
何かを起点にして周りを見渡す
この感覚が現れるのが次の文です。
She traveled by night and rested by day.
彼女は夜旅をし、日中休んだ。
by nightは夜間に、by dayは日中に、と言う意味です。
元々は次のような含みがあります。
彼女は旅をした。周りを見わたすと夜だった。
彼女は休んだ。周りを見渡すと昼だった。
僕の家を起点に見渡すと海がある。
と言っているのと同じことですよね。
語源にはaboutやduringの意味が含まれていますが、そもそもnear近く、と言う意味とリンクしていますよね。
周辺にと言うaboutの意味と夜間に、日中にと言うduringの意味がこの文章から読み取れます。
周辺を見渡すからこそ、間duringの意味が出てくるのです。
前置詞byの使い方⑥視点を変える
前置詞byには視点を変えて見て下さい
と言う話者さえ気づかない話者の意図が隠れています。
使い方の①②⑤はまさにその典型です。
海まで来て視点を変えて下さい、僕の家があります。
割れた花瓶を見て視点を変えて下さい、割った人がいます。
旅している彼女から視点を変えて下さい、夜です。
何を言っているか分からない人もそのまま読み進めて下さい。
A. I grabbed him by the arm and pulled him out.
私は彼の腕を掴んで引きずり出した。
B. Jiro always holds his son by the hand when they cross the street.
次郎はいつも息子の手をつないで道を渡るようにしている。
これらの文章では次のような視点の移動が行われます。
A.私は彼を掴んだ(元々の焦点)、しかし掴んだ主体はその腕である、その腕に注目してほしい、その腕を使って引きずり出した。
B.次郎は息子を掴んだ(元々の焦点)、しかし掴んだ主体はその手である、その繋いだ手に注目してほしい、手をつないで道を渡るからこそ息子が安全なのである。
このように視点を隠れた主体に向けさせ、その隠れた主体を使って何かをする
そのような場合に前置詞byが使われます。
この時、「体の一部を使って」と言う意味で、by theと言う表現をし、by hisとは言いません。by his handだと、息子の体の一部というより、主語である次郎の手を彷彿させて、しかも「次郎の手の近くで息子を掴んだ」と言うなんだか意味不明な文章になるからです。
さらにgrabbed his handと言う文章も間違いではありませんが、
視点の移動がなく、その腕を使って、と言うニュアンスを出しにくいのです。
それは元々の焦点が腕にあり、そこから視点が動かないからです。
これが、前置詞byの視点を変える効果、の意味です。
まとめ
如何でしたか?
前置詞byについてまとめて見ます。
My house stands by the sea.
僕の家は海の側にあるよ。
ここから読みとれるニュアンスを感じて見て下さい。
僕の家は海経由でくれば見えてくるよ。
とりあえず海までくれば分かるよ。
海を目指せば分かるよ。
海まで来て周りを見ると分かるよ。
これらの含みが表しているのは、
海は隠れた主体であり、
海は代理でもあり、
そこから視点を移せば家が分かる、
という事です。
前置詞byのイメージは「近く」だと言われますが、
「近い」と言うワードだけを意識しても何も見えてきません。
さらに重要なのは「視点を動かす」のを意図しているのがbyだという事です。
それをよく表しているのが、
little by little : 徐々に
原義:少し、隣に視点を移すとまた少しある状況
one by one :1人ずつ、1個ずつ、1歩1歩など
原義:1人、隣に視点を移すともう1人いる状況
two by two : 2人ずつ、2個ずつ、2人1組でなど
原義:2人、隣に視点を移すと、もう2人いる状況
Three by three : 3人ずつ、3個ずつ、3人1組でなど
原義 : 3人、隣に視点を移すと、もう3人いる状況
3人1組だと、3人いて隣に3人いてまた隣に3人いて。。。みたいに視点を移動させて確認するじゃないですか。(便宜上隣と言っていますが、後ろとかでもいいです)
そう言った視点を移す感覚が前置詞byにはあるので、
そこから差異を表すbyと言うのがあるんです。
The youngest runner won by a mile.
最年少ランナーが1マイル(1.6km/h)差で優勝した。
2位に視点を移すと1マイル差があったという事です。(勝利の主体は差)
マラソンの1.6キロは決して近い(near)とは言えませんよね。
主体から視点を移す、と言うのが大事なんです。
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