助動詞doは何のためにあるのか考えたことありませんか?

疑問文や否定文のdoが助動詞という事を知らない人の方が圧倒的だと思います。助動詞と言うくらいなので、動詞のヘルパーさんなのですが、いったい何を助けているのでしょうか?なぜ疑問文や否定文でdoを使うのか、今回はdoの歴史について解説し、doの存在意義について述べたいと思います。意味が分かれば使うのが楽しくなりますよ。

助動詞doの時制機能

一般動詞の質問文(疑問文)や否定文では

文章作成時に動詞のDoが使われます。

I like baseball. (肯定)
私は野球が好きです。

Do you like baseball? (質問)
野球が好きですか?

I do not like baseball. (否定)
野球が好きではありません。

不思議じゃなかったですか?

これはbe動詞を使った質問文や

否定文とは異なっています。

I am a student. (肯定)
私は学生です。

Are you a student? (質問)
あなたは学生ですか?

I am not a student. (否定)
私は学生ではありません。

be動詞はbe動詞を使って文章を作成するのに、

一般動詞はdoを使って文章を作ります。

しかし、英語の歴史をたどるとdoを使わない

時代があったことを知っていますか?

Like you baseball?

I not like baseball.

実はこういう使い方が、かつて存在しました。

現代では一般動詞の代わりにdoを置くので、

このdoを「ダミーのdo」と呼びます。

ダミーのdoは助動詞です

他にも進行形や受け身で使うbe動詞

完了形に使うhaveも助動詞です。

Can やwillやmustは法助動詞、

Doやbe、haveは第一助動詞と言います。

助動詞すべてに共通して言えるのは

時制をコントロールしている

という事です。

時制を奪われた助動詞とセットの

本動詞は必ず原形です。

He does not walksのように

動詞を現在形にはしません。

時制を奪った助動詞は、

Doとdoesなら現在時制、

Didなら過去時制です。

Willなら現在時制、

Wouldなら過去時制です。

時制は現在と過去2つしかありません。
時制のまとめを見ていただくと視界が広がります

そして、ダミーのdoのもう一つの機能は

質問文における文型の維持です。

ダミーのdoを置くことで、SVOの語順を

維持することに一役買っています。

だから助動詞なんです。

では、どのように発展してきたかについて

簡単に解説していきたいと思います。

助動詞doの肯定文が存在していた

ダミーdoの出自については1つという事ではなく

いくつか有力な説があります。

例えば、アングロサクソン人がイングランド諸島に

入ってくる以前から住んでいたケルト人の言語に

同じ用法があると言われています。

また、フランス語の影響を受けている

と言う説もあり、特に否定文の作り方

に於いて、そっくりな変遷を辿っています。

さらに、完全な語彙動詞からの発展や、

代動詞からの発展、使役動詞からの発展

などがあります。

語彙動詞とは例えば、「する」

と言う本来の意味という事です。

I do my homework.

宿題をする

意味を持ったdoの事ですね。

代動詞とは繰り返しを避けるために使うdoの事で、

代名詞をイメージすると分かりやすいです。

I love you more today than ( I did ) yesterday.
昨日愛していたよりもあなたを愛している。

Loveが先行詞でdidが代動詞です。

使役動詞とは「仕向ける」と言う

ニュアンスを含んだ動詞ですね。

The king did write a letter.

The king wrote a letter.

王が手紙を書いた。

この2文は同じ意味です。

didを使った文章では

「王が手紙を書くように自分に仕向けた」

と言う回りくどい意味を内在しています。

この回りくどい使役のdoが初めて発見されたのは

13世紀のイギリス南西部あたりだそうです。

a.His sclauyn he dude dun legge(中期英語)
his pilgrim’s-cloak he did down lay(単語変換)
‘He laid down his pilgrim’s cloak.’(現代英語)
彼は自身の巡礼者マントを敷いた(和訳)
c1300 (?c1225) Horn 1057 (Denison 264)

https://www.kul.pl/files/165/history%20of%20english/18Do-periphrasis.pdf

b. toward þe stude þat þe sonne: In winter does a-rise.(中期英語)
towards the place that the sun in winter does arise(単語変換)
冬の太陽が昇る方角に向かって(和訳)
c1300 Sleg.Patr.Purg (Ld) 205.191 (Denison 264)

https://www.kul.pl/files/165/history%20of%20english/18Do-periphrasis.pdf

文章aではlayという動詞があるのにdid

付け足し、文章bでは動詞ariseの前に

わざわざdoesをつけ足しています。

これは肯定文で使われた表現ですが、

15世紀まで全国的には非常にまれで

makeやletなどの使役構文が好まれたようです。

動詞は人称や時制によって変化をする

物なので、もし、変化した形が分からなければ、

didやdoesを動詞の原形と組み合わせて使う

と言うのは起こり得たのではないかと

僕は思っています。

現代英語において、この回りくどいdo

の使用が見られないことは、

原型と現在形は3人称単数以外、

一つに集約されてしまっていることと

無関係ではないように思います。

助動詞doの否定の歴史

一方で否定形は上記の影響を受けつつ

以下のような変遷を辿っています。

1.Ic ne secge.
2.I ne seye not.
3.I say not .
4.I not say.
5.I do not say.
6.I don’t say

https://www.sprach-und-literaturwissenschaften.uni-muenchen.de/studium/studienbuero/forschungsprojekte/bisherige-projekte/reinfeld.pdf

古英語のIc ne secge.を現代英語にすると

I not sayとかI no sayになります。

動詞の前に否定辞をおくのが、一般的でした。

古英語後期から中英語時代にかけて、

動詞を否定辞で挟む用法が生まれます。

I ne seye not.を現代風にすると

I not say nothingとか I no say nothingです。

しかし、この用法は2重否定に見えるので

否定辞が一つ消去されるようになります

(同時に弱音だった可能性がある。)

I say not .はI say nothing.ですね。

そしてSayとnotの入れ替わる現象が起きました。

I not say.

nenotの違いはありますが、

動詞の前に否定辞を置くという

原点に戻ってしまいます。

しかし、16世紀と言う僅か1世紀の間だけしか

見られない現象なので、早い段階で

ダミーdo+not

の形が受け入れられたようです。

これは、肯定文のダミーdoが広がってきた

タイミングに一致するようにも見えます。

つまり、肯定文のダミーdoにnotを付けた

可能性があるのではないかと言うことです。

さらに歴史的に見て言えるのは、

否定の言葉は置く場所によって

どこを否定しているのか分かりにくい時があります。

文法が確立していない時代の人間にとって
(ルールが確立していない時代の人)

I not sayはnot がIを否定しているのか

sayを否定しているのかはっきり分からない

と思った人もいたのではないでしょうか。

sayの後にnotを置いた場合は他動詞の

目的語を否定しているようにも見えます。

だからこそ否定辞で挟むテクニックもあった

し動詞の前に戻ってきたと考えられます。

いつでもダミーのdoを付けて否定することで動詞を否定していることが誰の目からも明らかになった

という事は確実に言えるわけです。

このように最終的にダミーのdoをnotの前に置いて

そのdoを否定するところに落ち着いたわけですが、

肯定のダミーdoは衰退し、強調として現存するのみです。

16世紀頃は疑問文でもよくダミーが使われるように

なりましたが、これは、主語と述語動詞を

固定する意識が働いているようにも思えます。

と言うわけで、助動詞doは助動詞beとは

異なる歴史の結果ダミーを使うに至っています。

まとめ

如何でしたか?

疑問文や否定文で使うdoの歴史について

解説しました。

このdoはダミーの助動詞で

本動詞の時制を変えなくてもダミーのdoが

時制を表示してくれます。

また、「ダミーdo+not」で、いつでも

本動詞の否定であるとが明らかになりました。

さらに疑問文では「主語+述語動詞(本動詞)」

の語順を変えることなく質問文であることが

明らかとなりました。

このように3つの利点を持ったdoは

本動詞と連携する助動詞なのです。

助動詞doが生まれるきっかけは

一つではないでしょう。

でも使役のdoの役割はきっかけとした

目で見て分かりやすい一例です。

では、逆にbe動詞はなぜそのまま否定するのでしょうか?

恐らくですが、be動詞と言うのは

ダミーdoと同じように意味を持たない

動詞に働きが似ているから

だと思います。

例えば

I am a studentと言うのは

I=student

なので否定にすると

I≠student

という方程式を表すだけです。

動詞が必要なので配置されている感覚で、

意味を持たないとはそういう事です。

もともとこの形からの延長に

「存在する」の意味を内在した

be動詞と言うものがあります。

疑問文にした時の違和感もなく

馴染んでいたとしか思えません。

この辺は想像の域を出ませんが、

このように英語の歴史に思いを馳せれば

義務的な要素になったダミーdoも

使うのが苦にならないですよね。

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英語ランキング

Doの歴史参考:

https://www.kul.pl/files/165/history%20of%20english/18Do-periphrasis.pdf

https://www.sprach-und-literaturwissenschaften.uni-muenchen.de/studium/studienbuero/forschungsprojekte/bisherige-projekte/reinfeld.pdf

https://www.academia.edu/35376870/The_origin_of_periphrastic_DO_a_sociolinguistic_approach_Bomm_1

https://wannes.me/log/posts/25/jespersens-cycle

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