「a」「the」は使い分けるには、木ではなく森を眺めましょう!

からくり英語アイキャッチ画像_AとThe

この記事にたどり着いたあなたは、「a」と「the」の使い分けについて悩んでいることでしょう。「a」と「the」の使い分けを理解するには、それぞれが全体の中でどのような位置づけなのかを眺める必要があります。「a」と「the」を解説した記事は数多くありますが、おそらく、こんな解説法はどこにもなく、自分自身が教わりたかった方法です。こちらの記事では、まず全体での「冠詞」の位置づけを解説してからそれぞれのルーツを辿り、意味や使い方を説明していきます。全体から捉えることが出来れば、もっと冠詞使いやすくなります。

「冠詞」とは分かりやすく言うと「森の木」

辞書で「dog」を調べたことがありますか?

実は意味が複数あってその中の1つに「犬」と言う意味があります。

でもこれは生きた個体の「犬」ではありません。


だから、辞書に「犬」と書いてあっても「dog」単体では会話では使えません。

会話で「dog」を使うためには、全体を眺める必要があります。

「犬が好き」と言う場合、特定の犬ではなく「世の中の犬というもの」
を意味する「dogs」という言い方になります。

I like dogs.

これでall dogsと言わなくても、犬全部好きだという言い方になります。

「茶色い犬が好き」なら犬全部から茶色い犬を全部取り出した言い方です。

I like brown dogs.

「大きくて茶色い犬が好き」なら、茶色い犬からさらに大型犬を取り出した言い方です。

I like big brown dogs.

このように、形容詞をつけると、好きな犬種が限定されていく(好きな犬を絞り込んでいる)のが分かりますか。

全部の中から抜き取っていくイメージです。

形容詞と言うのは「どんな」を表す言葉と言えますが、「どの」を表すことも出来ます。

「あの」「この」「その」「彼の」「彼女の」

これらは「どんな」ではなく「どの」に該当します。

そして「どの」を使えばドンピシャで選び出すことが出来ます。

「彼の(飼っている)犬が好き」と言った場合、ドンピシャで特定されますね。

I like his dog.

今、世の中の犬全部から一匹に限定されたのが分かりますか。

前述したように「dog」だけでは会話に使えません。

これは輪郭を持たないからです。

まず犬全部「dogs」にして、その中から話題にしたい犬を選び抜く感覚が必要です。

冠詞は森の中の1本の木なのです。

その木を選び抜くことが輪郭を与えるという事です。

「どんな」とか「どの」をつけることで輪郭が出来ます。

「a」も「the」も形を持たない「dog」に輪郭を持たせるための形容詞の仲間なのです。

英語の名詞には「輪郭」という感覚があるので、この感覚を磨くしかありません。

「a」の意味は「話題の提起」「問題の提起」です。


「a dog」は「あなたには未だ話していない犬1匹」と言う話題の提起です。


ただし、「あなたは知らない」と言うマーカ―であって、無理な訳出はしません。

「a」の語源は1

「a」の語源は古英語に遡ります。


「1つの」を意味した「Ān」が数詞を表す「one」と不定冠詞「an」に別れていきました。
「an」は現在の「a」と同じようにドンピシャで個体を取り出すための役目がありました。
「an apple」ならリンゴ1個、「an dog」なら犬1匹と言った具合です。


やがて、「apple」のような名詞の頭文字が母音はそのまま「an」に、
「dog」のような名詞の頭文字が子音からはnが消滅して「an」は「a」になります。

ここで分かるように「a」は「1つの」と言う意味がもともとの語源ですが、
「私の」「彼の」「この」とは違って「未だ話していない個体」を取り出すときに「a」を使います。

訳す必要は全くありませんが、「a」がつく名詞は
「相手が知らない個体(話題の提起)」の事です。

英語では、リンゴの話をする時でさえ、何個あるのか、どのリンゴか、どんなリンゴか、と言う具体性を伝える必要があります。

「a」をつける時=「会話に初めて登場させたい時」


「a」は「相手が知らない個体」の事なので
会話に初めて登場させたい個体には「a」をつけます。

そして、個体とは単数の名詞のことです。
語源からも単数名詞にしか使えないことが分かると思います。

例えば、あなたは昨日犬を見かけたとします。その犬はあなたが初めて見かける犬です。
首輪がついていて迷子のようでした。

その犬の話を友達にする時に、友達と目撃したわけではないので、
友達にはその犬の情報はありません。

そんな時に「あの犬が」とか「その犬が」と言っても
友達は「どの犬?」って混乱しますよね。

そこで「a」をつけて「a dog」と言えば「あなたには未だ話していない犬の話だけどね」
と友達に伝えることが出来、このマーカーを見た相手は「初めて登場する犬の話だね」と理解することが出来、また「たくさんいる犬の中の1匹の事だね」という事も分かります。

訳す必要はないけど、そういう含みを持った形容詞なのです。

「a」の使い方の例

「a」の使い方の例をいくつか紹介しますね。
「a」は会話の導入部分で使われることが多いです。

I saw a dog this morning. ・・・
今朝、犬を見たんだけどね。・・・

会話の相手は「a」を見て、「犬と言ってもたくさんいるけど、初めて登場する1匹の犬だね」と理解します。

I read a book yesterday. ・・・
昨日本を読んだんだけどね。・・・

会話の相手は「a」を見て「本と言ってもたくさんあるけど、初めて登場する1冊の本だね」と理解します。

I went to a park last Sunday. ・・・
先週の日曜日公園に行ったんだけどね。・・・

会話の相手は「a」を見て「公園はたくさんあるけど、初めて登場する公園の1つだね」と理解します。

I bought a car last month. ・・・
先月、車を買ってさ。・・・


会話の相手は「a」を見て「車はたくさんあるけど、初めて登場する1台の車だね」と理解します。


*日本語では「a」は訳さないので、忘れがちですが、「I bought car」では「輪郭のない車を買った」ニュアンスになります。ルールに従って「a car」という事で、「cars(すべての車)」の中から、「初めて会話に登場させる」ために取り出した「購入した1台の車のこと」だと、相手に伝わるのです。

「the」の意味は「あなたもご存じの」

では次に「the」のルーツを見て見ましょう。

「the」の語源は「その」「あの」

「the」の語源はインドヨーロッパ祖語の「this」「that」を意味する「so-」 から来ています。
古英語時代には「se」で、「the」と「that」は区別されていませんでした。
つまり、時代によって「あの」「その」「この」を3つすべて意味する言葉だったのです。

お分かりの通り、「あの犬」「この犬」「その犬」は「すべての犬」から特定して取り出した犬であり、輪郭があります。

また、話し相手が知らなければ、「あの犬」「その犬」と言っても「どの犬?」ってなりますし、「この犬」なら当然視界に入るので相手は必然的に知っています。

つまり、「the」は「あなたもご存じの」という意味で、
訳す時にはおおむね「その」と訳せば良いですが、
「あの」「この」などもチュエーションによってはあり得ます。

「the」をつける時=「お互いに知っているとき」

「the」をつけるときには、「お互いに知っている名詞」に対して
「あなたも知っているよね」と言うマーカーとして使います。

「あの」「この」「その」の3つの違いは距離感です。
大まかに言えば、
手元に近ければ「この」、
「この」より手元から離れれば「その」、
「その」より離れれば「あの」です。

さらに言えば、「この」は視界に入るものにしか使いませんが、
「その」と「あの」は目に見えない範囲でも使います。

「あの」「その」「この」はすべて単数ですが、「a」と違い
「the」は複数名詞にもつけることが出来ます。

そして、複数の名詞の前につける場合も、「あなたもご存じの」と言う
ニュアンスを含むマーカーとして使います。

例えば、4匹の犬を話題して、2回目に登場させる時には
複数形のthe dogsで「さっき述べた4匹の(犬)」と言う意味を含みます。

「a」が1つしか表せないのに対して「the」は1つ以上なら使えます。

「the」の使い方

I saw a dog this morning. The dog was・・・
今朝、犬を見たんだけどね。その犬が・・・


会話の相手は「the」を見て、「今朝見た犬だね」と理解します。
またThe dog wasはシチュエーションによってはHe wasやShe wasと言うこともできます。

I read a book yesterday. The book said・・・
昨日本を読んだんだけどね。 その本に書いてあったのが・・・


会話の相手は「the」を見て「昨日買った本だね」と理解します。

A car crashed into a big tree, but the driver was not injured.
車が大きな木に激突したが、ドライバーに怪我はなかった。

ドライバーは初登場ですが、相手には「the」を使っても、
木に衝突した車のドライバーのことね」と伝わります。


一方で、車も木も「あの車が」「あの木に」と言っても分からないので、
それぞれ「a」を付けて「車の輪郭」と「木の輪郭」を伝えてあげる必要があります。

I have two cats. The cats are ・・・
うちに二匹猫を飼っているんだけど、彼らは・・・

「the cats」は「They」の言い換えに使いましたが、複数の名詞で2回目の登場なので「the」を使うことが出来ます。

「その猫らは」は不自然なので「彼らは」「その子たちは」など、より自然な日本語に変換すれば良いのです。重要なのは「全体から2匹を取り出した輪郭のある飼い猫」だと伝える「the」をつけることです。

まとめ


「a」と「the」の違いは理解できましたか?

冠詞は奥が深く、冠詞だけをテーマにした本があるくらいなので、全部を伝えるのはほぼ無理です。

しかし、初級編として大まかなイメージはお伝え出来たかと思います。

まとめると、「a」も「the」も全体から一部を取り出す形容詞の仲間です。


全体から取り出す際に、初めて取り出す単数名詞は「a」。


もう取り出した単数名詞は「the」。


初めて取り出す、複数の名詞には「a」以外の形容詞の仲間を使います。
「two cats」「small cats」「back cats」など「あなたが知らない猫」
を登場させることが出来ます。


そうやって取り出した複数の猫に対して「the」を使います。

さらに「the」には「それ以外はない」と言う意味があります。


例えば「この犬は」と言って目の前の犬の話を始めれば、「この犬以外の話はしてない」と言う暗黙の了解がありますよね。

このように「the」には複数の中から選んだ「唯一のもの」と言う含みがあります。

一方で「a」には「数ある内の1つ」と言う感触を伴い、「話題の提起」や「問題の提起」として使いう為、「唯一の」と言う含みはありません。

とりあえずは、初めて会話に登場させる名詞であっても、相手も知っているだろうと思う時には「the」をつければ良いです。

日本語でも同じですが、「あの話あったじゃん」と言って相手が理解できない場合は「どの話?」と聞き返しますよね。

理解できない場合は相手が聞き返すから問題はないわけです。

逆に、「the dog」と言われて、あなたが「どの犬だっけ?」と思えば「which dog?」と聞き返せば、それだけで会話が成立します。


ぜひ恐れずに使い分けの練習をして見て下さい。

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